イギリスに留学します ー ポジティブ心理学・コーチング心理学の探求

 今年の9月からイギリス/ロンドンに渡って、1年間の大学院修士課程に進みます。専攻はPositive Psychology and Coaching Psychology(ポジティブ心理学コーチング心理学)です。私は大学で商学部経営学科を専攻していて、その後は国際協力界隈でプロジェクトマネジメントなど担当していたので、今回全く基礎知識のない分野への挑戦となります。

 また、これを機に新卒から約7年半勤めた会社を退職して、卒業後の進路も特に定まっていない状況でもあるので…、今後のキャリア形成にとって重要な1年になりそうな予感がしています。(というより、生活していくためになんとかしないといけません。。)

 なぜこのような突拍子もない(?)キャリア変更を決心したかについては別途記事を書きたいと思いますが、今回はPositive Psychology and Coaching Psychology(ポジティブ心理学コーチング心理学)とはどういった学問か?また、どういった可能性を秘めているのか?について、私が考えていることを含めて紹介したいと思います。

 

 ポジティブ心理学とは?

 心理学は、心の病を抱える人たちを手助けすることに主眼が置かれてきました。例えば現場レベルでは、不登校躁鬱病PTSD心的外傷後ストレス障害)などに悩む人に対して、症状の緩和や社会への適応を図るためにカウンセリングを行うことと言うと、イメージし易いかもしれません。いわば、ネガティブな状態にある人を通常の状態に戻す(ないしは近づける)ことが従来的な心理学の役割として認識されているものです。

 これに対して、私たちの心の充足を図って精神的に豊かな生活を送れることに主眼を置く心理学が近年注目を集めており、その発想に基づいた心理学のことを「ポジティブ心理学」と呼んでいます。その名の通り、特に心の病などを抱えていない通常の状態にある人も対象にして、ポジティブな状態に持っていくことを目指す分野です。ウェルビーイングとかマインドフルネス、フロー状態(ゾーン)といった言葉、また各国の幸福度ランキングなど聞いたことがある人もいるかと思いますが、こういったキーワードもポジティブ心理学に関係するものです。

 ざっくり言うと、社会や個人の幸せを心理学という科学的アプローチによって実現しようという学問になります。(ちなみに日本では誤解されがちですが、心理学は理系的学問というのが世界のスタンダードです。)

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コーチング心理学とは?

 続いてコーチングですが、サッカーや野球のコーチが持っている技能をイメージすると分かりやすいと思います。すなわち、選手を指導して能力向上やチームの勝利といった目標の達成を導くこと、またそもそもどういった目標を目指すべきか設定の手助けを行うこと等も含まれます。これをスポーツの分野だけでなく、広く一般に拡大させて個人や組織の自己実現だったり目標達成を支援するための技法をコーチングと呼んでいます。こちら、こばかなさんが大変分かりやすいnoteを書いてくださっていますので、ぜひご覧ください!

 

 現代社会における意味

 さて、Positive Psychology and Coaching Psychology(ポジティブ心理学コーチング心理学)の修士課程では、どういったことを勉強するのか何となくイメージしてもらえたでしょうか。

 私はこういった学問分野があるんだと知った時に結構衝撃を受けたのですが、それは現代社会における画一的な幸せの形(平たく言うと、経済的な成功)を再定義するための指針を与えてくれる点で非常に重要と感じたからです。

 特に現代社会は以下の点で特徴的であり、産業革命や世界大戦以降の経済一辺倒の世界のあり方に警鐘を鳴らし、新しい幸せの形を再定義するニーズの高まりと幸せ自体の多様化が広がりを見せています。まさに時代の要請に応える学問と言えるでしょう。

  1. 平均寿命の伸び:医療の発達等で私たちの平均寿命・健康寿命は伸びており、今後は生命工学の進歩によって平均寿命100歳を超えることも夢ではなくなってきています。これまでの人生のあり方(自身や家族を犠牲にしながら、会社のために一生懸命働いて、老後はゆっくり余生を過ごす)を人生100年時代でも続けていくのか、真剣に考えて行かねばなりません。
  2. 世界的な貧困脱却:日本はもちろん、世界的に貧困層とされる人の数は減少しており、中産階級が飛躍的に増えています。生活に余裕が生まれたことで、とにかく働いて生活費を稼がなければならなかった状況が変化し、多くの人が長期的な視野で人生設計を行えるようになりました。
  3. モノからコトへの消費性向の変化:2と関係して、余裕が出てきた可処分所得や浮いた時間がコト消費へ充てられるようになっています。これは生活を便利にするモノへの消費から、精神的満足感を満たすコト消費への性向の変化であり、新しい消費者ニーズの現れと言えるでしょう。
  4. テクノロジーの発達:これから私たちの生活は更に便利になっていきます。時間の使い方やお金の稼ぎ方は変化し、またそれらリソースを使ってできることの幅も大きく広がっていきます。これまでとは全く異なる新しい生き方ができる可能性が飛躍的に高まってきているのです。
  5. グローバル化の更なる進展:グローバル化」自体は叫ばれて久しいのですが、その実態は変化し続けています。最初は人・モノ・カネの交流をグローバル化と呼んでいましたが、最近では思想や信条、文化(例えばMe too運動やヴィーガンの流行など)のグローバル化が進み、また気候変動や難民問題など危機のグローバル化にも注目が集まってきています。「グローバル化」が指すものの密度や深度が大きくなって、異なる国や民族、時代の生き方とか価値観に触れることができるようになります。それは私たちの選択に大きな影響を与えるでしょう。

 

 私たちはこれからの人生をどのように歩むべきでしょうか。平成までの人生観は、おそらく令和の時代には通用しなくなるでしょう。新しい時代にポジティブな人生を歩めるように、また多くの人がポジティブになる手助けができるよう、この1年間頑張りたいと思っています。今後、大学院で学んだこと、インプリケーション等についても本ブログで書いていきたいと思うので、読んでもらえると嬉しいです。