「コーチングとは何か?」 自分の言葉で考えてみる。

f:id:mskeria107:20191219034001j:plain

 この3ヶ月コーチングを勉強してきて実感するのは、コーチが自身の言葉でコーチングの意義を定義することがとても重要ということです。コーチングを通じてクライアントにどうなって欲しいのか、そのためにどういうアプローチを採るのかという点は、各コーチの考え方・価値観が色濃く反映されるところで、逆にここが曖昧だどコーチングの構成や質問の展開が甘くなって、それがクライアントの成長にも影響を与えてしまいます。

 

 例えば、以下はICF(国際コーチ連盟)JapanのHPから抜粋した、コーチングとは何かについて説明した文章です。この内容にはもちろん異論ありませんが、連盟の性質からして抽象的な記載にならざるを得ないので、いざここで書かれている内容に沿ってコーチングしよう!と思っても、なかなか手のつけようがありません。

コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことです。対話を重ね、クライアントに柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援するコーチとクライアントとのパートナーシップを意味します。

 

 その一方、コーチが自ら考えて言語化した定義には、当該コーチがコーチとして力点を置いている部分、自身の強みと認識している部分、これまでクライアントの成長を実感してきた部分などが反映された結晶でもあります。つまり、コーチとしてどんな価値を提供するのか・どんなコーチを目指しているのかが浮き彫りになって、コーチングを行う際の指針になるのです。これによって特にコーチングを勉強し始めた頃によくある、クライアントに質問をしながら「あれ、このセッションは今どこに向かってるんだっけ??」と迷子になってしまうことも少なくなるんじゃないかと思います。

 

 もちろん、自分なりの定義はコーチとしての経験の蓄積や能力開発とともにブラッシュアップされていくものです。都度振り返って、自分はどういう価値を提供するコーチ(になりたい)か考え続けることが大切だと思います。

 -----

 ということで、UELコーチングを勉強して3ヶ月経った私が、今現在コーチングの意義をどのように考えているのか、私自身の言葉で記載したいと思います。これはUELプログラムの特徴、自身のReflectionの過程、クライアントとの実践練習といった私自身の経験をエッセンスにしたものなので、全てのコーチに賛同を得られるものではない(かもしれない)ですし、今後も十分変わり得るものという前提です。私は最近コーチングを行うときは、ここで記載した価値を提供できるように意識しています。

 

  • 私にとってコーチングとは、クライアントが頭(Cognitive)と心(Emotoinal)と行動(Behavioral)を統合させることにより、目標を達成する過程を支援すること。コーチングを通して、クライアントが自己効力感とウェルビーイングを高め、コーチがいなくてもチャレジングな目標に向かって努力し続けられる状態になることを目指す。

 

 上記定義について、大きく2つの点から説明したいと思います。

 

 まず1つ目ですが、コーチングの大きな特徴として人の目標達成・問題解決を支援していることが挙げられます。例えばコンサルティングはビジネス課題の解決が目的なので、頭を使ってアウトプットすることが期待されていますが、人に変わってもらうにはそれだけでは十分とは言えません。「頭ではわかっているけれど...(行動できない)」という人は現実問題としてかなり多くいます。

 

 では、何が必要かというと心(Emotional)で納得することが大切ですし、また頭(Cognitive)で理解すること、行動(Behaviroral)で実行することの3つがバランスよく考慮されていることが肝要です。文字通り、全身全霊をかけてクライアントが目標達成に取り組める状態を作ることとも言えます。

 

 3つのうち心(Emotional)と頭(Cognitive)を取り上げてみます。心で納得することは、頭で理解することと異なっていて、またお互いに関係もしています。例えば、上司に言われたノルマを達成するという目標は、概して頭だけで理解したものになりがちです。ノルマを達成すれば会社の利益につながるし、そもそもこれは自分の仕事だしといった考え方が典型的ですが、ここから更に思考を深めて、利益の達成が社会や自分に与える影響は何か?ノルマを達成する過程で自己成長の機会はないか?といったことを考えればどうでしょう。

 

 頭(Cognitive)を上手に使っていくほどに、自分の価値観だとかやりたいことがクリアになってきて、ノルマを達成する目標とどのように結びつくかが見えてきます。ノルマの達成というありきたりな目標が、心(Emotional)で納得できる目標に変わる瞬間です。心と頭と行動、3つのどれかが欠けてしまうと、何らか壁にぶつかったときに前進するために必要な馬力が出ず、途中で諦めたり妥協してしまったりということに繋がるでしょう。

 

 そして2つ目に関してです。コーチングを通じてサブ目標を1つずつ達成することは、自己効力感(Self Efficacy)を養うことに繋がります。自己効力感とは、何か新しいことに挑戦するときに自分がそれを達成できそうか自己評価することで、その評価が高い人ほど実際に取り組んでみようと思えるようになります。これは一時的な感情・気力の高まりであるモチベーションと異なり(モチベーションに由来する挑戦は停滞しがち)、これまでの経験の積み重ねに基づいて(どちらかと言うと比較的冷めた視点で)自分自身を評価する事です。そのため、コーチングを通じてサブ目標を達成していくほど自己効力感が高まっていき、新たな目標に対しても「私ならできそうだな」と思えるようになるのです。

 

 そしてコーチングを受けるとウェルビーイングが高まる別の記事でも書きましたが、人はポジティブになるほどCreativeになったり生産性が上がることが確認されています。また、外向的になって交友関係が広がるなど、新しいことに挑戦するためのリソースがどんどん増えていきます。ウェルビーイングに由来するこういった変化は、より高難易度の課題を克服することを可能にするので、更にポジティブな状態を生むことに繋がります。そして、更なるポジティブは更なるリソースを生み、更なる目標達成の機会をくれるのです。(この好循環を「Broaden and Build Theory」と呼びます。)

 

 コーチングによってクライアントの自己効力感とウェルビーイングを高め、更なるチャレンジを行うためのコンディションを整える。そして、そのチャレンジが更なる自己効力感とウェルビーイングを創造して、上昇スパイラル的に成長が促進される。この状態が達成できれば、クライアントはコーチがいなくても自走していけるようになります。この点を意識して、コーチは目標設定や承認スキルなどを高めていくことが必要だと考えています。 

 

 最後にこれまでの話を踏まえた私なりのコーチングの定義をレイアウトとしてまとめましたので、以下に貼り付けておきます。

f:id:mskeria107:20191216023737p:plain

f:id:mskeria107:20191216023735p:plain

-----

 以上が私の言葉でコーチングを説明したものです。これからも、クライアントの心と頭と行動をバランスよく統合させて、自律発展的(スパイラル的)に成長を促していけるよう、コーチングを練習していきたいなと思っています。