MAPPCPとキャリア

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 7月半ばにMAPPCPでの最後の授業が終わって、あとは修論の提出を残すのみになりました。落ち着いた気持ちで留学全体の総振り返りを行いたいところでもありますが、今は卒業後のキャリアという現実的な問題と向き合っています。

 

 私の場合、元々何らかの道を志向して決意した留学ではなかったので、卒業後のキャリアについては留学も折り返したぐらいのタイミングから徐々に考えるようになりました。そこで今回は、MAPPCPで学ぶことはどんな仕事に繋がるのか、私なりの考えを書いてみたいと思います。(※ 個人の独断と偏見です。)

 

 個人的には、留学の選択は必ずしもキャリアと結びつける必要はないと思っていて、学問分野への純粋な探究心や、疲弊したサラリーマン生活の中休み、海外留学への憧れなど、どんな理由でも良いと思っています。一方で現実問題として、キャリアの検討はやはり避けては通れないので、心配しなくてもMAPPCPに行くとこんな道が開けてるよ!とお伝えすることで、少しでも安心材料を提供できればなと考えてます。

 

1. コーチやカウンセラーなどの臨床職

 複数のクラスメートは既にコーチやカウンセラー、プラクティショナーとして働いていて、更に専門性を磨くためMAPPCPに参加しています。日本でも心理系サービスが近年注目を集めているので、こういった臨床系のキャリアは1つの候補になるでしょう。特にMAPPCPはポジティブ心理学コーチング心理学を融合させる世界初のアプローチをとっているので、その点がユニークポイントとして打ち出せると思います。

 

 また昨年、プログラムがEMCC(European Mentoring and Coaching Council)という欧州の代表的なコーチング協議会に認定されました。これにより、プログラムを修了してEMCCが定める要件をクリアすれば、公式な欧州コーチ資格を得られるようになりました。

 

2. Wellbeing系スタートアップ

 以前こちらの記事にも書いたように、Wellbeing産業は今後大きく成長することが予想されており(特にコロナ禍がその勢いを強めている気がします)、たくさんのスタートアップ企業が誕生しています。その多くは欧米系なのですが、もちろん日本にも複数存在していて、MAPPCPでの知見・経験が生かせる業界だと思います。

 

 どういった企業があるかはググったり、TwitterやAppなどで検索してもらえるとヒットするのでぜひ見てみてください。例えば以下のカオスマップなんかも参考になるかも。

 以下はスタートアップではありませんが、マインドフルネスの様々な産業への展開について紹介されています。

 

3. 人材育成・組織開発系コンサル

 MAPPCPでは、個人のウェルビーイングだけじゃなく、組織や社会のウェルビーイングについても学びます。例えば、同僚・部下のモチベーションを高めて事業成果を達成するリーダーシップスタイルだったり、経営と現場がビジョンを共有するための制度や施策などについてです。

 

 また、Googleに代表されるようにマインドフルネス研修を導入する会社も増えており、一人ひとりの働き易さ・働きがいが重視される時代になってきているので、BtoBとしてMAPPCPの学びを専門的に生かせる面白い業界だと思います。

 

4. 企業の人事ポスト/マネジメントポスト

 3.との関連で、各社の人事系・マネジメント系のポストも十分あり得る選択でしょう。人事部サイドから社内の人材開発に取り組んだり、特徴的なリーダーシップスタイルとコーチングスキルを生かしてプロジェクトをマネージするなど、MAPPCPでは汎用性の高い知識やスキルが学べると思います。

 

 「MBA=優秀な人材」という認知が既に定着してるのに対し、特に日本では「ポジティブ心理学?なんだそれ?」状態だと思うのですが、ウェルビーイングという広い概念について学んでいるからこそ、どういった点をアピールポイントと捉えて伝えるかが重要です。その意味では、マーケティングや企画系のポストともシナジーがある気がします。

 

5. 考えつくあらゆる仕事

 MAPPCPは、キャリアアップというよりも、充実した人生の歩み方について学ぶためのプログラムだと思っています。その点で、可能性はあらゆる仕事に広がっていて、どんな仕事であっても自分が天職だと考えるものを選ぶことが大切です。

 

 私自身、この留学は、幸せに関する理論的な研究やコーチングスキルを用いた思考の深掘り・リフレーミングによって、「自分にとっての幸せとは何なのか?」という問いを内省し続けた1年でした。卒業後のキャリアは、勉強していく中で徐々に見つけられるだろうし、それは最初に思い描いていたものと大きく変わっている可能性だってあります。 また、同じ会社であっても、仕事への向き合い方、周囲との関わり方が変わって、新たな価値を感じられるようになるかもしれません。

 

 やりたいことを目指すのも良いし、特に思いつかない人はMAPPCPを通して歩みたい人生を考えてみても良いと思います。私たちの目の前には、あらゆる可能性が広がっています。

幸せな日本人

 "Wellbeing"(ウェルビーイング)が欧米でブームになって暫く経ちます。ロンドンで本屋巡りなんかすると、多くの書店でウェルビーイング専門コーナーが設置されているのを目にしました。

 

 特に印象的だったのは、そのコンテクストで、日本的価値観が注目を集めていることです。例えば、実際にロンドンの本屋で撮影した以下の写真では、「生き甲斐」「改善」「禅」といった日本人なら誰もが聞いたことのあるワードのタイトルが並んでいます。

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 ここに、幸せな人生を歩む、日本人のポテンシャルを感じます。日本は毎年の幸福度ランキングでは先進国で後塵を拝する残念な状況ですが、私たちが古くから慣れ親しんできた価値観や文化、美学に、ウェルビーイングを高めるヒントが隠されているのです。実際に、"Meditation"(メディテーション)という欧米の瞑想文化も、禅の修行法が欧米に輸出されてブームになったものです。

 

 私は、留学前は駐在員として海外暮らしをしていて、ことあるごとに日本の良さ(食事、治安、几帳面さ等々)を痛感する生活を送っていたのですが、この1年間は特に日本文化の奥深さに気づかされるようになりました。

 

 その1つが「侘び寂び」です。

 

 「侘び」とは、貧しいことや足りていないことを肯定的に受け入れて、心の充足を見出すこと。「寂び」とは、時間の経過による衰えや劣化に趣を感じる、諸行無常観を指します。例えば、豪華絢爛な金閣寺よりも質素な銀閣寺に安らぎを感じたり、桜の花のすぐ散ってしまう姿に風情を見出したり、これらは侘び寂びの美学に由来するものです。

 

 そして、侘び寂びは、私たちの人生にも当てはめられる価値観だと思います。つつましいシンプルな生活や、老いて皺が刻まれていく姿に、どこか美しさを感じられる。完全な人生・完全であり続ける人生を送ることは不可能なのに、高価なモノ、若さ、美貌、社会的成功など、一時のピークを求めてそれにしがみつこうとする現代的価値観とは対照的な考え方です。

 

 1つ、日本の侘び寂びの美学に関する面白い記事を見つけました。下の写真は、サウジの王族が日本の皇室を訪問した際のもので、その応接室のシンプルでほぼ何もない佇まいが世界中で大きな称賛を得たそうです。王室といえば、煌びやかな装飾とインテリアに彩られた富の象徴というイメージがありますが、日本の皇室からはその対極にある美を感じ取ったのだと思います。

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 また、片付けコンサルタントとして世界的有名人となった「こんまり」こと近藤麻里江さんを引用した論文を時どき見かけます。ここまで彼女が注目されるのは、単に整理整頓のハウツーを提供したからじゃなく、「Spark joy」という言葉でモノに精神性を見出す、九十九神的な価値観を世界に伝えたからなのかもしれません。

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 日本固有の価値観は、その他にも「物の哀れ」とか「幽玄」とか様々なものがあり、茶道や金継ぎ、武道、俳句などの文化芸術にその精神が反映されています。コロナが落ち着いたら、そういった日本文化にもっと触れていきたいなと思います。

【案内】6/29(月), 7/3(金), 7/8(水)オンラインシンポジウム

 UELのMAPPCPがオンラインシンポジウムを行うようです。日本の方には時差があってなかなか大変かもですが、イローナボニウェル氏をはじめ豪華な顔ぶれが並んでいますので、ポジティブ心理学コーチング心理学に興味のある方、ぜひ参加申し込みしてみては如何でしょうか?

 

 申し込みは以下ページから無料で行えます。

www.eventbrite.co.uk

 

 上ページからのコピペですが、プログラムは以下のとおりです。

Day 1 Monday 29th June – 16:45 to 20:15 (BST)

16.45 – 17.00 – Connect on Teams

 

17:00 to 17:10 - Welcome to UEL: Professor Hassan Abdalla, Provost - Welcome to MAPP-CP at UEL: Dr Andrea Giraldez-Hayes, MAPP-CP Programme Leader

 

17:15 to 18:00 - Being a Positive Psychology Coach (Keynote)

Prof Christian van Nieuwerburgh (MAPP-CP UEL) and Dr Robert Biswas-Diener

Dr Robert Biswas-Diener and Prof. Christian van Nieuwerburgh present their latest thinking about Positive Psychology Coaching based on a number of recent writing projects. What is a Positive Psychology Coach? What does a Positive Psychology Coach need to know? How is Positive Psychology Coaching different from other approaches? The speakers will explore and address these questions and demonstrate the approach during the session. There will be opportunity for participants to ask questions and discuss their ideas.

 

18:00 to 18:15 – Break

 

18:15 to 19:00 - Communicating your way to well-being (Workshop)

Dr Tim Lomas (Senior Lecturer in Positive Psychology MAPP-CP UEL) and Dr Kirsty Gardiner (Lecturer in Positive Psychology MAPP-CP UEL)

This workshop explores the ways in which language and communication shapes our understanding and experience of well-being. We will touch upon some theory and research before offering some practical activities including how to have meaningful conversations and how to engage creatively with language to enhance wellbeing.

 

19:00 to 19:45 - Rethinking Coaching Supervision (Workshop)

Dr Andrea Giraldez-Hayes (Programme Leader and Senior Lecturer in Coaching Psychology - MAPP-CP UEL) & Julia Papworth (Lecturer in Coaching Psychology - MAPP-CP UEL)

Although coaching supervision has not traditionally been considered as part of the coaching training, in the last few years more organisations have been integrating supervision during the formative stage. This workshop invites you to consider the importance of reflective practice and supervision for your development as a coach, and how do professional coaches become supervisors.

 

19:45 to 20:15 -Q&A with MAPP-CP Team chaired by Dr Andrea Giraldez-Hayes

 

 

Day 2 Friday 3rd July – 16:45 to 20:15 (BST) 

16.45 – 17.00 – Connect on Teams

 

17:00 to 17:10 - Welcome to UEL: Dr Paul Marshall, Pro-Vice Chancellor Career & Enterprise

Welcome to MAPP-CP at UEL: Dr Andrea Giraldez-Hayes, MAPP-CP Programme Leader

 

17:15 to 18:00 Leadership for uncertain times. Positive and existential leadership approaches for building employees’ agility and resilience (Keynote)

Dr Ilona Boniwell (Founder of MAPP at UEL) & Professor Aneta Tunariu (Dean of Psychology at UEL).

Interactive dialogue with Professor Aneta Tunariu & Professor Ilona Boniwell

 

18:00 to 18:15 – Break

 

18:15 to 19:00 - Group Coaching

Ana Nacif (Lecturer in Coaching Psychology MAPP-CP UEL)

 

19:00 to 19:15 - Q&A with MAPP-CP Team chaired by Dr Andrea Giraldez-Hayes

 

 

Day 3 Wednesday 8th July – 8:45 to 12:15 (BST) 

8:45 to 9:00 – Connect on Teams

9:00 to 9:10 - Welcome to UEL: Dr Paul Marshall, Pro-Vice Chancellor Career & Enterprise

Welcome to MAPP-CP at UEL: Dr Andrea Giraldez-Hayes, MAPP-CP Programme Leader

 

9:15 to 10:00 - Leveraging the positive in positive psychology coaching (Keynote)

Dr Suzy Green (Director of The Positive Institute Director and Honorary Professor at UEL)

Whilst there are continued debates about the emerging field of Positive Psychology Coaching, there is continued research on the beneficial outcomes of positivity on our wellbeing. In this keynote presentation Dr Suzy Green will provide an overview of the science of positivity and argue for its explicit usage in positive psychology coaching.

 

10:00 to 10:15 – Break

 

10:15 to 11:00 - Search for Strengths: Building Resilience with Strengths Based CBT approaches

Max Eames (School of Psychology - University of East London)

How is it possible to navigate times of brief, extended or even lifelong challenge, and perhaps flourish in the process of doing so? Perhaps the important question becomes: When you cannot control the storm, what do you want to be wearing whilst you are out in the rain?

Discover how a process of guided discovery can be used to demonstrate that each of us – YOU included – has a set of innate strengths that, with the right line of enquiry, ‘reveal themselves’, as if by magic. Within five minutes of this interactive workshop, you’ll be able to apply some of the ‘insider secrets’ which lay at the heart of strengths-based approaches in CBT.

 

11:00 to 11:45 Title TBC (Keynote)

Professor Ciaran O'Boyle (Director, Centre for Positive Psychology and Health. RCSI-University. Ireland)

 

11:45 to 12:30 - What did I take most from studying MAPP and MAPP- CP?”: interactive dialogues with accomplished MAPP & MAPP-CP alumni

Paul Conway. Creator of Skychology

Dr Aarti Anhal. Founder of before nine

Ross Hasting. Co-Founder at Ne-Lo

Miriam Akhtar. Director of Positive Psychology Training

Ruth Cooper-Dickinson. Founder and Managing Director of CHAMPS

 

11:45 to 12:15 - Q&A with MAPP-CP Team chaired by Dr Andrea Giraldez-Hayes