mskeria107の日記

アフリカ・南米・中東で活動する国際協力師。仕事の話、キャリアの話、雑多な話など。

国際協力を仕事にするために身につけておきたい7つのこと(勉強編)

 将来的に国際協力に関わりたい!という人は意外と多いんじゃないでしょうか。これまで以上にテレビや観光等を通じて外国の人々や生活を知る機会が増え、また長期的なキャリアとして一度は海外で仕事してみたい、という人も多いかと思います。

 実際にこれまでの国際協力と言えば政府やNGOが主なプレーヤーでしたが、今では民間企業や個人が主体となりつつあり、どのような立場であってもそのチャンスがあります。

 そこで本エントリーでは、国際協力を仕事にするために身につけておきたい7つのこと(勉強編)について紹介したいと思います。私も国際協力を仕事として早7年が経ちますが、以下に挙げる視点は、各国や地域で起こっている問題の背景だったり、解決のための手段を理解する上でいずれも重要なものです。まずは、その分野の有識者が言っていることを理解する、様々な意見・見解を比較する、その国や地域の現状を認識する、といったレベルを目指して、将来的には自分なりに分析して独自のアウトプットを出せるまで専門性を高められると良いでしょう。

 あわせて、各テーマの勉強に役立つ入門書なども紹介していますので、それらを通じて基本を身につけたあとは、実際のレポートなどを読んで分からないことを都度調べてみてください。

英語+α

 英語は言わずもがなですね。英語のレポートを読んだり、英語で打ち合わせをしたり、と英語は必要な言語ですので、コツコツ地道に勉強するのが大切です。また、英語に加えてもう1言語以上わかると、出来ることが一気に広がります。途上国の政府や企業相手で英語が通じないことはままありますし、地域住民や村人など裨益者と対話をするならその国の言語が分かると一気に距離が近くなります。特にすでにフォーカスしたい地域が決まっている人(西アフリカならフランス語、中南米ならスペイン語、ブラジルならポルトガル語、その国の現地語など)は、ぜひ英語+αを意識してみてください。

 スマートな語学勉強法について、以下エントリーを書いていますので、こちらも参考にしてください。

mskeria107.hatenablog.com

マクロ経済学

 日本で生活しているとなかなか実感が湧かないかもしれませんが、途上国の経済は非常に脆弱で、アメリカや最近では中国といった先進国の影響を強く受けています。金利だったり、インフレだったり、為替だったりが、その国の企業活動や消費活動、労働市場などに多くの影響を与えています。また、GDP成長率や産業構造、国際収支なども国の経済状況・今後の課題を知る上で非常に重要です。

 例えば、農業を営むある村の人々が、ここ数年は収入が低くなり生計維持が難しくなったと困っているとき、あなたは何が原因だと思うでしょうか。生産効率が悪いとか、パッケージが魅力的でないとか、流通の改善が必要とか、経営的な視点での問題発見・問題解決が思いつくかもしれません。これをマクロ経済学的に考えてみると、国全体が不況にあり消費活動が停滞している、通貨安で安価な外国競合品が流入している、産業が農業含む1次産業から3次産業に移っていて労働人口の確保が難しい、といった大局的な視点で物事を考えられるようになります。マクロとミクロ、両方の視点が必要なのですが、普段の生活からはイメージしづらいマクロの視点を意識して勉強するようにしましょう。

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政治

 国際協力のトレンドとして、政府ODAから民間企業の資金動員へとトレンドは移行しつつありますが、まだ政府は主要なプレーヤーとして機能しています。また、途上国では概して政治の力が非常に強く(かつ未熟でもあるのですが...)、その政策運営が人々の生活に大きな影響を与えます。(特に選挙で政権交代があった時などは、これまで前の政府と積み上げてきたものが一気に水の泡になることもこの業界ではしばしば…。)そこで、政治や政府がどういった機能を持っているのか、意思決定システムや財政の仕組みなど、よく分からない人はざっと基本を押さえておいた方が良いでしょう。大統領や首相の位置づけ、議会や司法の仕組み、選挙の仕組みなど、国ごとに少しずつ異なっているので、まずは日本の仕組みについて理解してみてください。それをベースにして、自分が関心のある国はどうなっているんだろう?と比較してみると違いが良く分かります。

歴史・宗教

 ざっくりとでも世界の流れを押さえておけば、その国や地域の文化や民族のルーツがわかります。また、現代に繋がる国と国の関係(仲が良かったり悪かったり)や、その国・地域が抱えている問題(教育レベルが低い、産業が成り立たない等)についても、歴史的な文脈で理解できることが多くあります。特に宗教は多くの国で戦争を引き起こしてきました。2011年から続くシリア内戦は、もとは「アラブの春」と言われる軍事政権に対する民主化運動なのですが、戦争長期化の結果、イスラムシーア派スンニ派の対立、歴史的に関係を持つ米ロ、そしてサウジ、トルコの介入による代理戦争の様相、加えてイスラム国の台頭など、様々な歴史的コンテクストで紐解くことができる戦争です。

 今後、興味ある地域が出てきたり、仕事上関わりを深めていく国などが決まれば、その歴史を重点的に勉強するのが良いでしょう。まずは、網羅的に書かれた教科書を1冊読んで概観を掴んでみることをオススメします。

ファイナンス・数字

 数字へのアレルギーがあれば早めに取り除きましょう。といっても、難しい数学的知識は必要ありません。

 例えばアジアの2030年までのインフラ需要は22.6兆ドルと言われていますが、この資金をどうやって確保するか。主には外国からの融資や出資を通じてとなります(一部グラントもあり)。JICAや世界銀行といったバイドナー・マルチドナーは、ソブリンファイナンス(途上国政府向けの融資)やノンソブリンファイナンス(企業への融資・出資)を多く手がけ、また商社や銀行、メーカーなどは、そういった援助機関と協調して融資や出資を行ったり、また逆にノンソブリンファイナンスを受ける立場にあります。各機関内の部署によって必要となる専門レベルは異なりますが、基本的な出資・融資に関わるリテラシーは不可欠です。

 また、必ずしもファイナンス面からの協力でなく、技術協力をメインに考えたい人(例えば、途上国で農業を教えたい、保健・医療を向上させたいなど)も数字の感覚は必要です。「教育」に関わりたい人なら、ざっと思いつくだけでも以下の数字はおさえて、加えてその数字が「高い」か「低い」か感覚を持っておくことが大切です。

/就学人口/先生あたり生徒数/教室あたり生徒数/女子就学率/識字率/初・中・高等教育への進学率/就学率と就職率の関係/それらの経年的変化/など。

修士号、博士号

 何か特定のフィールドで自分の専門性を高めていくことも重要です。経済学でも良いですし、ファイナンスや農業、都市開発、保健、防災、様々な分野があります。語学向上や人脈形成、先端の知識・研究の理解にも通じますので、今すぐにではなくても一度考えてみることをオススメします。特に国際機関に努めたいという人は、その要件として修士号以上が定められていることがほとんどです。

IT、コンピュータサイエンス

 すでに多くの企業で注目されていますが、国際協力業界でも多少の遅れはありつつも近年注目されている分野です。特に専門人材が不足している分野ですので、他者との差別化を図る上でも役に立つでしょう。

 私も勉強が必要な立場なので、オススメの書籍等あればぜひ紹介してもらいたいのですが、世界銀行ブロックチェーンの研究を行っています。以下は世銀の債権発行に活用された事例ですが、記事引用の通り、この分野への世銀の関心の高さが伺えます。

www.worldbank.org

世界銀行は2017年6月、ブロックチェーンイノベーション・ラボを設立し、ブロックチェーンをはじめとする革新的技術が、土地管理、サプライチェーン管理、保健、教育、クロスボーダー決済、温室効果ガス排出権取引といった分野に及ぼす影響についての研究を進めている。

 

 国際協力というと、開発経済学とか政治学といった分野が必要(それをやっておけば十分)と思いがちですが、「その国を創る」ことに貢献できる分野であれば(つまりどんな分野・専攻であれ)問題ありません。実際のところ、私の同僚にも海外旅行にもこれまで行ったことなく、初めて国際協力に触れるという人が少なからずいました。

 上記で挙げた点を押さえながら、1つ以上の自分の得意分野やフィールドを見つけて深めていけると良いでしょう。